個人事業主が使える補助金は?従業員なし・開業直後の条件と選び方

個人事業主が使える補助金は?従業員なし・開業直後の条件と選び方

個人事業主やフリーランスも、国や自治体の補助金を使えます。小規模事業者持続化補助金、デジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金)など、国の主な補助金は個人事業主を対象に含めています。

ただし、個人事業主なら何でも申請できるわけではありません。従業員が0人だと申請できない補助金や、確定申告を済ませていない開業直後には申請できない補助金があります。また、申請できることと採択される(審査で選ばれる)ことは別で、補助金は原則として事業を終えた後に受け取る後払いです。

まず最初に確認する5つの条件をおさえ、目的別の候補、従業員を雇う場合の助成金、申請の準備、資金繰りと税金、相談先の順に確認していきましょう。

※制度の名称・金額・日程は、2026年10月時点の公式情報にもとづいています。

個人事業主も補助金を使える|最初に確認する5つの条件

個人事業主も補助金の対象になります。自分が使えるかどうかは、「個人か法人か」ではなく、次の5つの条件で決まります。

確認する条件確認することこの条件で変わること
① 使い道広告、店舗改装、会計ソフト、設備など、何にお金を使うか調べる補助金の種類
② 業種と従業員数業種と、常時使用する従業員の人数(家族を数えるか)小規模事業者に当たるか、従業員0人でも申請できるか
③ 開業時期と確定申告開業日と、確定申告を済ませているか開業前・開業直後に申請できるか、出せる書類
④ 所在地事業所のある市区町村、商工会と商工会議所のどちらの地区か申請の窓口、使える自治体の補助金
⑤ 発注・購入の時期すでに契約や購入をしていないか交付決定前の支出は原則として対象外

個人事業主・フリーランスも対象。判断するのは公募要領の「補助対象者」

「個人事業主」「フリーランス」「自営業」といった呼び方で対象かどうかが決まるわけではありません。補助金ごとに、公募要領(募集のルールをまとめた資料)の「補助対象者」の欄に、個人を含むか、どの業種が対象かが書かれています。

たとえば小規模事業者持続化補助金は、「個人事業主(商工業者であること)」を対象に含める一方で、医師・歯科医師・助産師は対象外としています。デジタル化・AI導入補助金も、補助対象となる中小企業・小規模事業者の区分に個人事業主を明記しています。

開業届を出しただけで受給が決まるわけでもありません。補助金は、事業計画を審査し、予算の範囲内で対象者を選ぶ制度だからです。

従業員なしで申請できる補助金と、対象外になる補助金がある

従業員を雇っていない個人事業主でも申請できる補助金はありますが、すべてではありません。国の主な補助金では、次のように分かれます。

補助金従業員0人の個人事業主確認した資料
小規模事業者持続化補助金申請できる第20回公募要領
デジタル化・AI導入補助金申請できるインボイス枠 公募要領
中小企業省力化投資補助金(一般型)申請できない第8回公募要領
新事業進出・ものづくり商業サービス補助金申請できない(応募時点で従業員0人は対象外)第1回公募要領

注意したいのは、従業員の数え方が補助金ごとに決まっていることです。持続化補助金では、同居の親族の従業員は「常時使用する従業員」に含めません。家族だけで営んでいる場合、補助金によっては従業員0人として扱われることがあるため、公募要領の定義を確認しましょう。

新事業進出・ものづくり商業サービス補助金は、個人も対象に含めつつ、応募時点で従業員が0人の事業者を対象外としています。企業規模の拡大や賃上げを目的とする補助金だからです。「個人事業主も対象」という説明だけで判断せず、従業員の要件まで読む必要があります。

従業員を雇っている場合は、補助金に加えて雇用関係助成金も候補になります(後述の「従業員を雇う個人事業主は、雇用関係助成金も検討できる」で整理しています)。

開業前・開業直後は「確定申告を済ませているか」で使える補助金が変わる

次の表の4つの補助金は、いずれも開業前(開業届上の開業日より前)には申請できません。開業後も、確定申告書の提出を求める補助金は、最初の確定申告を済ませるまで申請できないことがあります。

補助金開業前開業後、まだ確定申告をしていない確認のポイント
持続化補助金(一般型・通常枠)申請できない申請できる(確定申告書の代わりに、開業届と開業後の売上を示す売上台帳などを提出)申請時点で事業を始めていることが必要。開業届を出していても、開業日が申請日より後の場合や、まだ事業を始めていない場合は対象外
持続化補助金(創業型)申請できない(開業届上の開業日が申請日より後の場合も対象外)申請できる。店舗のオープン準備中など、まだ商品・サービスを提供していなくてもよいが、補助事業の終了までに提供を始める必要がある特定創業支援等事業の支援を受けた日と開業日の両方が、締切から過去1年以内
デジタル化・AI導入補助金申請できない申請できない直近の確定申告書と所得税の納税証明書が必須で、代わりの書類は認められない
新事業進出・ものづくり商業サービス補助金(新事業進出枠)申請できない創業後1年未満は対象外最低1期分の決算書が必要

出典:各補助金の公募要領(2026年10月時点)

デジタル化・AI導入補助金の現在の公募要領では、確定申告書は原則として令和7年(2025年)分とされています。2026年に開業してまだ確定申告をしていない場合は、現在の書類の要件を満たせません。

創業型も、第4回公募要領で、申請時点で開業していることが条件とされています。開業届を出していても、開業届上の開業日が申請日より後の創業予定者は対象外です。一方、開業していれば、店舗のオープン準備中など、まだ商品やサービスを提供していない段階でも申請できます。ただし、補助事業の終了までに提供を始める必要があり、始めていなければ補助金は交付されません。決算期を一度も迎えていない場合は、確定申告書の代わりに、売上が発生していることを示す売上台帳などを提出します(すでに営業を始めていれば申請時、営業開始前なら実績報告時)。

あわせて、市区町村が認定を受けて行う「特定創業支援等事業」(経営・財務・人材育成・販路開拓を学ぶ継続的なセミナーなど)の支援を受けていることが条件です。第4回公募では、支援を受けた日と開業日の両方が、2025年12月15日から2026年12月15日までの間にある必要があります。名称に「創業」とあっても開業前には申請できないため、開業日と、支援を受けた時期の両方を確認しましょう。

個人事業主が検討できる補助金を目的別に比較

使い道が決まったら、その目的に合う補助金を調べます。2026年10月20日時点の主な候補は次のとおりです。補助額は基本の上限額で、特例の上乗せや従業員数による違いは各見出しで説明します。

やりたいこと調べる補助金基本の補助上限・補助率従業員0人公募状況(2026年10月20日時点)
チラシ・広告、ホームページ、店舗改装などの販路開拓小規模事業者持続化補助金(一般型・通常枠)50万円・3分の2申請できる第20回:11月5日受付開始、12月15日締切(予定)
開業まもない時期の販路開拓小規模事業者持続化補助金(創業型)200万円・3分の2申請できる第4回:11月5日受付開始、12月15日締切(予定)
会計・受発注・決済ソフト、レジ、パソコンデジタル化・AI導入補助金(インボイス枠)ソフトは機能数に応じて50万円または350万円・50万円以下の部分は4分の3(小規模事業者は5分の4)申請できる公表済みの直近の締切は10月30日
人手不足を補う設備・システム中小企業省力化投資補助金カタログ注文型:従業員5人以下は500万円・2分の1以下一般型は申請できない。カタログ注文型は追加の審査ありカタログ注文型は随時受付。一般型の第9回は11月上旬に公募開始予定
新製品・新サービスの開発、新分野への進出新事業進出・ものづくり商業サービス補助金革新的新製品・サービス枠:従業員1〜5人は750万円・小規模事業者は3分の2申請できない第1回:10月30日18時締切

公募は回ごとに日程と要件が変わります。申請する回の公募要領で、最新の条件を確認してください。

販路開拓・広告・店舗改装|小規模事業者持続化補助金

個人の店舗やサービス業が、最初に検討しやすい補助金です。新しい顧客を獲得するための取り組み(販路開拓)と、それに合わせた業務の効率化にかかる費用の一部を補助します。

対象になるのは、常時使用する従業員が、商業・サービス業(宿泊業・娯楽業を除く)で5人以下、宿泊業・娯楽業・製造業その他で20人以下の「小規模事業者」です。

第20回公募(一般型・通常枠)の補助額は、公募要領で次のように定められています。

区分補助上限主な条件
通常枠50万円(補助率3分の2)―
インボイス特例50万円を上乗せ2021年9月30日〜2023年9月30日を含む課税期間に一度でも免税事業者だった、または2023年10月1日以降に創業した事業者が、補助事業の終了時点でインボイス発行事業者になっている
賃金引上げ特例150万円を上乗せ従業員1人あたりの給与支給総額の年平均を3.0%以上増やす。赤字の事業者は補助率4分の3
両方の特例200万円を上乗せ両方の条件を満たす

賃金引上げ特例は、従業員の給与を引き上げる取り組みが条件です。事業主本人や事業専従者は従業員に含めないため、従業員を雇っていない場合は使えません。また、特例を希望して要件を一つでも満たさないと、上乗せ分だけでなく補助金全体が交付されません。

補助の対象になる経費は、機械装置等費、広報費、ウェブサイト関連費、展示会等出展費、旅費、新商品開発費、借料、委託・外注費です。店舗改装やバリアフリー化の工事は委託・外注費に含まれます。個人事業主が誤解しやすいのは次の3点です。

  • パソコン・タブレット・事務用プリンターは対象外:汎用性が高く、ほかの目的に使えてしまうためです。
  • 自動車も対象外:キッチンカーも対象外です(自走式の作業用機械など、税法上の「機械及び装置」に当たるものを除く)。
  • 広報費とウェブサイト関連費には上限がある:それぞれ補助金の申請額で30万円(税込)までで、ホームページ制作などのウェブサイト関連費だけでは申請できません。

申請には、地域の商工会または商工会議所が発行する「事業支援計画書(様式4)」が必要です。第20回の発行依頼の締切は2026年12月4日で、申請の締切(12月15日17時)より早い点に注意が必要です。商工会と商工会議所のどちらの地区かで窓口が異なり、代理人だけで相談や発行の依頼はできず、事業者本人が支援を受けます。

開業まもない人向けには「創業型」があります。第4回公募の補助上限は200万円(補助率3分の2)で、インボイス特例を満たすと50万円が上乗せされます。条件は、前の見出しで説明した特定創業支援等事業の支援と開業の時期です。

会計ソフト・レジ・パソコン|デジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金)

業務のデジタル化に使う補助金で、旧「IT導入補助金」から名称が変わりました。事務局に登録されたITツール(ソフトウェアやクラウドサービス)を、登録された「IT導入支援事業者」から導入する仕組みです。自分で選んだ製品やサービスなら何でも補助されるわけではありません。

個人事業主が使いやすいのは、インボイス制度に対応した会計・受発注・決済ソフトを導入する「インボイス枠(インボイス対応類型)」です。インボイス枠の公募要領による補助の内容は次のとおりです。

対象補助率補助上限
ソフトウェア(会計・受発注・決済のうち1機能)50万円以下の部分は4分の3(小規模事業者は5分の4)50万円
ソフトウェア(2機能以上)50万円以下の部分は同上、50万円を超える部分は3分の2350万円
パソコン・タブレットなど2分の110万円
レジ・券売機など2分の120万円

パソコンやタブレットは、会計・受発注・決済のいずれかの機能を持つソフトウェアと一緒に導入する場合に限って対象になります。購入先も、そのソフトウェアを扱うIT導入支援事業者に限られます。パソコン単体の購入には使えません。

申請には、GビズIDプライム(国の電子申請で使う共通のアカウント)の取得と、IPA(情報処理推進機構)の「SECURITY ACTION」の宣言が必要です。

日程と要件も確認しておきましょう。2026年10月20日時点で公表されている直近の締切は10月30日17時で、交付決定は12月10日の予定です。第7次公募回からは、給与支給総額に関する要件の追加などの制度変更が告知されています。従業員がいない個人事業主にその要件がどう適用されるかは、申請する回の改訂版公募要領で確認してください。

交付決定の前に契約・購入したITツールは、補助の対象になりません。例外は、事務局が告知した「スマートレジ」の導入などに限った事前着手の制度(2026年9月15日以降の導入が対象、申請の受付は2027年1月ごろの予定)のように、公式に定められたものだけです。

人手不足を補う設備・システム|中小企業省力化投資補助金

人手不足を補うロボットやIoT機器、システムの導入に使う補助金です。導入の仕方によって、二つの型に分かれます。

型内容受付個人事業主が確認すること
カタログ注文型カタログに登録された製品を選んで導入する随時受付補助上限は従業員5人以下で500万円(大幅な賃上げを行う場合は750万円)、補助率2分の1以下。常勤の従業員がいない場合は追加の審査がある
一般型事業に合わせた設備の導入やシステムの構築公募回ごと(第8回は10月16日に締切済み、第9回は11月上旬に公募開始予定)従業員0人は申請できない。補助上限は従業員5人以下で750万円(特例で1,000万円)

一般型には、補助事業の後の計画で労働生産性を年平均4.0%以上、1人あたり給与支給総額を年平均3.5%以上伸ばし、事業場内の最低賃金を地域別最低賃金より30円以上高くすることなどの要件があります。少人数の個人事業主は、この要件を数年間続けられるかを申請前に検討しましょう。

カタログ注文型も「人手不足の状態にある中小企業等」が対象で、申請時に、残業時間、従業員の減少、求人が埋まらないことなどから、人手不足の状態にあることを示します。カタログ注文型の公募要領によると、常勤の従業員がいない事業者も申請はできますが、事業の実態を確認する追加の審査があり、事業に関する契約書など事業活動を示す書類の提出が必要です。2回目以降の申請は、常勤の従業員がいないとできません。補助上限を引き上げる「大幅な賃上げ」は、事業場内の最低賃金を3.0%以上、給与支給総額を6%以上引き上げる計画が条件で、達成できないと引き上げ前の上限に合わせて減額されます。

新製品・新事業への挑戦|新事業進出・ものづくり商業サービス補助金

新製品・新サービスの開発や、新しい市場への進出に使う補助金です。単に古い設備を新しくするための補助金ではなく、3〜5年の事業計画にもとづく中長期の投資が対象です。旧「ものづくり補助金」は2026年5月、旧「新事業進出補助金」は2026年6月に公募を終了しており、現在はこの補助金が公募されています。

個人も対象に含まれますが、応募時点で従業員が0人の事業者は対象外です。新事業進出枠は、創業から1年未満の事業者も対象外です。

従業員が1〜5人の場合、革新的新製品・サービス枠の補助上限は750万円(賃上げ特例で850万円)、小規模事業者の補助率は3分の2です。補助事業の後の計画では、付加価値額を年平均4.0%以上、1人あたり給与支給総額を年平均3.5%以上伸ばし、事業場内の最低賃金を地域別最低賃金より30円以上高くする必要があります。給与と最低賃金の目標を達成できないと、補助金の返還を求められることがあります。

第1回公募の締切は、公式サイトで2026年10月30日18時と案内されています。従業員を雇い、数年かけて事業を広げる計画がある個人事業主向けの候補と考えましょう。

車・トラックの購入に使える補助金は限られる

事業で使う車の購入費は、持続化補助金などの一般的な補助金では対象になりません。前述のとおり、持続化補助金は自動車を対象外としています。車両に使える国の補助金は、電気自動車などへの切り替えを支援する環境関連の補助金が中心です。

補助金対象2026年10月20日時点の状況
CEV補助金(クリーンエネルギー自動車導入補助金)電気自動車などの新車。中古車と事業用車両は対象外受付中。受付終了の見込みは2026年12月上旬〜下旬(10月9日時点)
商用車等の電動化促進事業(トラック)運送事業者や、車両総重量2.5トン超の自家用トラックを業務に使う人などが導入する電動トラックと充電設備。電動車の導入計画を立てていることなどが条件2026年4月24日〜2027年1月15日に受付

出典:次世代自動車振興センター、環境優良車普及機構(LEVO)

CEV補助金の「事業用車両」に、仕事で使う自分の車が当たるかどうかは、車の登録の区分によります。購入前に次世代自動車振興センターで確認してください。自治体が独自に電気自動車などの補助金を設けていることもあるため、所在地の自治体の制度もあわせて調べましょう。

創業や地域の課題への取り組み|自治体の補助金の探し方

国の補助金に加えて、都道府県や市区町村の補助金も候補になります。自治体の補助金は、原則としてその地域に事業所がある、または住んでいる事業者が対象で、ほかの地域の制度は使えません。

探すときは、中小企業基盤整備機構が運営するJ-Net21の「支援情報ヘッドライン」で、地域と「補助金・助成金」を選んで絞り込みます。神奈川県も、県内の支援情報はこの方法で探すよう案内しています。サイトに載っていない自治体独自の制度もあるため、市区町村のホームページや商工会議所・商工会の案内もあわせて確認しましょう。

創業期の人は、市区町村の特定創業支援等事業も確認しておくとよいでしょう。横浜市の場合、対象のセミナーなどを修了すると証明書が無料で発行され、会社設立時の登録免許税の軽減や融資の利率の優遇を受けられます。ただし、持続化補助金の創業型は「締切から過去1年以内」に支援を受けていることが条件のため、証明書を持っていても支援を受けた時期が古いと対象になりません。

事業承継・M&A補助金など、個人事業の引き継ぎに使える補助金や、ここで取り上げなかった目的の補助金もあります。

従業員を雇う個人事業主は、雇用関係助成金も検討できる

雇用保険に加入する従業員を雇っている個人事業主は、厚生労働省の雇用関係助成金も候補になります。雇用関係助成金は、従業員の正社員化や訓練などに取り組んだ事業主に支給されるもので、事業主本人の収入を補うお金ではありません。

前提になるのは、雇用保険の適用事業所であることです。個人事業主と同居している親族は、原則として雇用保険の被保険者になりません。家族だけで営んでいる場合は、助成金の対象になる従業員がいないことがあります。

取り組み助成金の例先に確認すること
有期雇用やパートの従業員を正社員にするキャリアアップ助成金取り組みの前日までに「キャリアアップ計画」を労働局へ提出する
従業員に職業訓練を受けさせる人材開発支援助成金訓練を始める前に「職業訓練実施計画届」を提出する
事業場内の最低賃金を引き上げ、設備投資をする業務改善助成金交付決定の前に設備を導入すると対象外

どの助成金も、取り組みを終えてから制度を知ったのでは間に合わないことがあります。人を雇う、待遇を変えるといった判断の前に、支給要領で要件と期限を確認しましょう。同じ取り組みに複数の助成金を受けられない「併給調整」もあるため、組み合わせる場合は申請前に労働局へ確認します。

個人事業主が補助金を申請するときの準備と流れ

申請の準備は、書類をそろえる、事業計画をまとめる、電子申請の環境を整える、の3つです。持続化補助金の第20回の受付期間は約6週間で、その間に商工会・商工会議所での手続きも済ませる必要があります。公募が始まる前から準備しておくと間に合いやすくなります。

確定申告書・本人確認書類・見積書をそろえる

個人事業主が求められる書類は、法人の決算書の代わりになる確定申告の書類が中心です。どの書類が必要かは補助金ごとに違うため、主なものを確認しておきましょう。

書類内容注意すること
確定申告書の控え第一表・第二表など税務署が受け付けたことがわかるもの(受付番号・受付日時の印字、e-Taxの受信通知など)を求める補助金がある
青色申告決算書または収支内訳書青色申告なら決算書、白色申告なら収支内訳書白色申告でも収支内訳書で申請できる補助金がある
納税証明書所得税の納税証明書(「その1」「その2」など)税務署で取得する。必要な種類は補助金ごとに異なる
開業届開業日の記載があるもの開業日の記載がない開業届は無効になる(持続化補助金 創業型)
本人確認書類運転免許証、住民票などデジタル化・AI導入補助金で必要
見積書購入・発注する予定の経費持続化補助金では、発注総額が50万円(税込)を超えると2者以上の見積もりが必要

デジタル化・AI導入補助金では、税理士の印だけが押された確定申告書の控えは適切な書類として扱われません。税理士がe-Taxで申告している場合は、受付番号などが印字された控えか、受信通知を用意しておきましょう。

使い道と効果を事業計画にまとめる

事業計画では、「だれに、何を、どう売るか」と、そのために何にいくら使い、どんな効果を見込むかをつなげて説明します。審査では、補助金を使う理由と、事業の成果に結びつくかが見られます。

たとえば、次の順に整理すると、計画の筋道が通りやすくなります。

  1. 現状と課題(例:近所の新規客が少なく、予約の多くが常連客)
  2. 取り組み(例:チラシの配布とホームページの予約機能の改修)
  3. 必要な経費と見積額(広報費、ウェブサイト関連費など)
  4. 実施する時期(交付決定後から補助事業の終了まで)
  5. 見込む効果(例:新規客の予約数、作業時間の削減)

補助金を受けるために投資を決めるのではなく、補助金がなくても実行する価値がある投資かを先に考えましょう。融資の事業計画は「返済できるか」を見るものなので、補助金の申請書類としてそのまま使うことはできません。補助金ごとの様式と審査の観点に合わせて作り直します。

GビズIDを準備し、交付決定の後に発注する

持続化補助金、デジタル化・AI導入補助金、省力化投資補助金の申請には、GビズIDプライムが必要です。持続化補助金の公募要領では、取得に数週間程度かかるとされ、暫定のアカウントは使えません。公募が始まる前に取得しておきましょう。

GビズIDのIDとパスワードは自分で管理し、他人に教えたり使わせたりしてはいけません。申請の支援を頼む場合も、アカウントを渡す形で任せるのは避けてください。

補助金の基本的な流れは次のとおりです。

  1. 公募要領で対象者、対象経費、補助率、期限を確認する
  2. GビズIDプライムを取得し、見積書や確定申告書などをそろえる
  3. 補助金ごとの事前手続きをする(持続化補助金は商工会・商工会議所の事業支援計画書、デジタル化・AI導入補助金はIT導入支援事業者との手続き)
  4. 電子申請で申請し、審査を受ける
  5. 採択・交付決定を受ける
  6. 交付決定日以降に発注・契約・支払いをして、事業を実施する
  7. 実績報告書と領収書などの証拠書類を提出し、検査を受ける
  8. 補助金の額が確定したら請求し、入金される

採択されただけでは発注できません。交付決定(補助金を交付することが正式に決まること)より前の発注・契約・支払いは、原則として対象外です。例外は、持続化補助金の展示会出展の申込みのように、公募要領に定めがあるものだけです。

補助金を使う前に確認したい自己負担・資金繰り・税金

返済が不要でも、負担がないわけではありません。入金までの支払い、受給後の義務、税金の3つを、申請の前に確認しておきましょう。

補助金が入るまでの支払いを、自己資金か融資で用意する

補助金は、経費を先に全額支払い、事業を終えて報告と検査を済ませてから受け取ります。そのため、実質的な自己負担額とは別に、入金までに立て替える金額を用意する必要があります。

次の仮の計算例で確認します。前提は、補助上限50万円・補助率3分の2の補助金で、本則課税(一般課税)で仕入れの消費税を全額控除できる課税事業者が、補助対象経費を税抜きで計算する制度を使い、税抜75万円の経費を支払う場合です。

項目金額
先に支払う金額(税込)82万5,000円
補助金の額(75万円×3分の2)50万円
実質的な自己負担(税抜)25万円
消費税分7万5,000円(この前提では、申告で全額を仕入税額控除できる)

簡易課税制度や2割特例を使っている場合は、仕入税額控除の額を売上の消費税額から計算するため、この7万5,000円は控除額に反映されません。免税事業者は仕入税額控除ができません。どちらの場合も、消費税分は実質的な負担として見込んでおきましょう。補助対象経費に消費税を含められるかどうかは、補助金と事業者の課税の状況によって異なるため、公募要領で確認しましょう。

入金までの期間も見ておく必要があります。持続化補助金の第20回公募では、補助事業の実施期間は交付決定日から2028年3月31日までです。実績報告書は、補助事業が終わった日(経費の支払いまで済んだ日)から起算して30日を経過した日と、2028年4月10日のいずれか早い日までに提出します。事業を早く終えたときは、報告の期限も早まります。請求から入金までは、数週間から1か月程度かかります。

個人事業主は、事業のお金と生活費が同じ口座で動きがちです。立て替える期間に生活費が足りなくならないよう、事業用の資金計画を分けて立てましょう。自己資金で足りない場合は、融資も検討し、返済の計画まで立てておきます。

関連記事:個人事業主の融資の選び方

発注時期・経費の重複・受給後の義務を確認する

補助金は、受け取った後にも守る決まりがあります。違反すると、交付されないか、返還を求められます。

  • 同じ経費に複数の補助金は受けられない:たとえば新事業進出・ものづくり商業サービス補助金は、国や公的制度の補助金と対象経費が重なる事業を対象外としています。
  • 証拠書類を保管する:見積書、発注書、領収書などは、補助事業の終了後も5年間保管します。
  • 取得した設備は勝手に処分できない:補助金で取得した一定額以上の設備は、売却や廃棄をすると補助金の納付を求められることがあります。持続化補助金では、50万円(税抜)以上の店舗改装工事も処分が制限される財産に当たる場合があります。
  • 賃上げなどの目標を守る:新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の給与や最低賃金の目標、持続化補助金の特例の要件のように、未達成だと返還や不交付になるものがあります。
  • 事業の中止や引き継ぎは事前に承認を受ける:持続化補助金では、補助事業を中止・廃止したり、ほかの事業者に引き継がせたりする場合、事前に事務局の承認が必要です。

受け取る補助金の所得税・消費税を分けて考える

事業のための補助金は、原則として事業所得の収入に含まれ、所得税の計算の対象になります。返済が不要なお金でも、受け取った分だけ所得が増えるため、所得税だけでなく、所得をもとに計算する住民税や国民健康保険料にも影響します。

固定資産の購入に充てた補助金には、特例があります。国や自治体から受けた補助金などで、交付の目的どおりに固定資産を取得した場合は、一定の要件のもとで、その分を総収入金額に算入しないことができます。この場合、確定申告書に明細書を添付し、固定資産の取得費は補助金の分を差し引いた額になります。税金が免除されるわけではなく、減価償却費が少なくなる分、後の年の所得が増えるため、課税を先に延ばす仕組みです。

消費税は扱いが別です。国や自治体からの補助金は、何かの対価として受け取るお金ではないため、消費税の課税対象になりません。一方で、補助金を使って支払った経費の消費税は、本則課税(一般課税)の課税事業者なら通常どおり仕入税額控除の対象です。簡易課税制度や2割特例を使っている場合は、売上の消費税額から控除額を計算するため、実際に支払った消費税は控除額に反映されません。補助金によっては、補助金に含まれる消費税分の報告と返還を求めるものがあるため、交付規程で確認します。

補助金を収入に計上する年は、入金日だけでは決まりません。

個人事業主の補助金はどこに相談する?

相談先は、相談したい内容で選びます。制度選びや事業計画の考え方は無料の公的な窓口、ITツールはIT導入支援事業者、雇用関係助成金は労働局や社会保険労務士、資金繰りや税金は税理士が相談先です。

相談したいこと主な相談先補足
自分に合う補助金、事業計画の考え方商工会・商工会議所、よろず支援拠点(神奈川県よろず支援拠点など)よろず支援拠点は国が各都道府県に置く無料の経営相談所。持続化補助金は商工会・商工会議所の支援が申請の条件
神奈川県内の支援制度神奈川産業振興センター、横浜企業経営支援財団など神奈川県が県内の支援機関として紹介している
対象になるITツール、申請の手続きIT導入支援事業者デジタル化・AI導入補助金はIT導入支援事業者と進める
雇用関係助成金の要件や手続き都道府県労働局、社会保険労務士報酬を得て申請書類の作成や提出の代行ができるのは社会保険労務士
補助金の申請書類の作成・提出を任せたい行政書士報酬を得て書類の作成を代行できるのは行政書士
立て替える資金や融資、受給後の税金税理士確定申告書、資金繰りの見通し、見積書を用意しておく

業務の範囲は資格ごとに法律で決まっています。2026年1月1日に施行された改正行政書士法で、行政書士でない者が、名目を問わず報酬を得て行政書士の業務を行えないことが明確になりました。雇用関係助成金も、資格のない者が関与した申請は不支給や返還の対象になると労働局が注意を呼びかけています。申請書類の作成代行を頼むときは、依頼先の資格を確認してください。

相談の前に、次のことをメモしておくと、どの窓口でも相談がスムーズに進みます。

  • 業種と、開業日(開業届の日付)
  • 従業員の人数と、家族の従業員がいるか
  • 使い道と、おおよその費用(見積書があれば用意)
  • 費用が必要な時期
  • 事業所の所在地
  • 直近の確定申告書(青色申告決算書または収支内訳書を含む)

自分で進めるか専門家に頼むかは、費用、手間、リスクの3点で比べます。

比べる点自分で進める専門家に頼む
費用公的な窓口の相談は無料。自分の作業時間がかかる報酬がかかる(金額は依頼先と依頼内容で異なる)
手間公募要領の読み込みから書類作成、実績報告まで自分で行う作成の負担は減るが、事業内容の説明や資料の準備は必要
リスク期限や手順の見落とし(交付決定前の発注、様式4の依頼の遅れなど)資格の範囲で業務を行う依頼先かの確認が必要。採択の保証はない

個人事業主の補助金についてよくある質問

副業で開業した個人事業主も申請できますか?

副業かどうかだけでは決まりません。事業として開業しているか(開業届の開業日など)、対象の業種か、確定申告書や納税証明書などの必要書類を出せるかで判断します。たとえば持続化補助金は、申請時点で開業していることが条件で、開業届上の開業日が申請日より後の場合は対象外です。

白色申告でも申請できますか?

申請できる補助金があります。持続化補助金(創業型)やデジタル化・AI導入補助金では、白色申告の場合は青色申告決算書の代わりに収支内訳書を提出します。ただし、すべての補助金で同じとは限らないため、申請する補助金の書類の要件を確認してください。

赤字の個人事業主でも申請できますか?

赤字というだけで対象外になるとは限りません。持続化補助金では、賃金引上げ特例を選んだ赤字の事業者(直近1年の課税所得が0以下)の補助率が3分の2から4分の3に上がります。ただし、この特例は従業員の給与を引き上げることが条件です。審査では計画の実現性が見られ、入金までの支払いも必要なため、立て替える資金を用意できるかも検討しましょう。

パソコン購入やホームページ制作に使えますか?

補助金と申請の枠によります。持続化補助金では、パソコンやタブレットは対象外です。ホームページの制作はウェブサイト関連費として対象になりますが、補助金の申請額は30万円(税込)までで、ウェブサイト関連費だけでは申請できません。デジタル化・AI導入補助金のインボイス枠では、会計・受発注・決済のソフトと一緒に導入するパソコンなどが、補助率2分の1・上限10万円で対象になります。どちらも、交付決定の前に購入したものは対象外です。

持続化補助金と持続化給付金は同じですか?

別の制度です。持続化給付金は新型コロナウイルス対策として給付された制度で、給付を終了しています。現在申請できるのは、販路開拓などの費用の一部を補助する小規模事業者持続化補助金です。

法人化を予定している場合はどうすればいいですか?

申請する前に、だれの名義で申請するかを決め、補助事業の途中で法人化する可能性があれば申請先に扱いを確認しましょう。持続化補助金では、補助事業をほかの事業者に引き継がせる場合、事前に事務局の承認が必要です。個人と、法人化した後の会社で、同じ経費に重ねて補助を受けることはできません。また、自治体の創業支援の証明書は、個人事業主が新たに会社を設立する場合を対象外とすることがあります(横浜市の例)。

仕事が減って生活が苦しいときに使える補助金はありますか?

事業用の補助金は、販路開拓や設備投資などの費用の一部を補助するもので、生活費や減った収入を補うものではありません。生活が苦しいときは、お住まいの市区町村の生活困窮者向けの相談窓口や、国民年金保険料の免除・納付猶予など、生活を支える制度の窓口に相談してください。事業を立て直すための資金が必要な場合は、融資も選択肢になります。

まとめ|目的と事業の状況から、使える補助金を絞り込もう

個人事業主も補助金を使えますが、使えるかどうかは制度ごとの条件で決まります。次の順に確認すると、候補を絞り込みやすくなります。

  1. 使い道:販路開拓、デジタル化、省力化、新事業のどれか
  2. 従業員:従業員0人でも申請できる補助金か(家族の従業員の数え方を含む)
  3. 開業時期と書類:開業日、確定申告書と納税証明書をそろえられるか
  4. 所在地と窓口:商工会・商工会議所の地区、自治体の補助金
  5. お金の流れ:交付決定前に発注しないこと、立て替える資金、受給後の税金

申請を考え始めたら、まずGビズIDプライムの取得と、確定申告書の控え・納税証明書の準備から始めましょう。持続化補助金(第20回・創業型第4回)を検討するなら、事業支援計画書の発行依頼の締切は2026年12月4日です。公募要領は回ごとに変わるため、申請する回の最新版で要件と期限を確かめてください。

この記事を書いた人

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税理士・公認会計士 武者 聡

横浜で10年以上にわたり、数多くの創業・経営支援に携わる。「税理士は一番身近な経営相談相手」という信念のもと、事務代行以上に「経営アドバイス」と「決断の後押し」を最重視。自身も一経営者としての視点を持ち、資金調達から事業拡大までを実践的にサポートします。経営の迷いを払拭し、ベストな選択へと導くパートナーとして、横浜・新横浜のビジネスを支え続けます。