建物への投資も対象に:2026年度創設「大胆な投資促進税制」のしくみと活用時の注意点
工場の新設や物流拠点の整備など、建物を含む大きな投資を考えている経営者の方に向けて、2026年度の税制改正で新しい制度ができました。通称「大胆な投資促進税制」といい、一定の要件を満たす投資について、税負担を軽くする措置を受けられる可能性があります。
経済産業省では2026年7月31日から申請の受付が始まっています。この記事では、制度のしくみ、対象になる企業と資産、主な要件、手続きの流れ、検討時の注意点を順にご説明します。
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1. どのような制度か
正式な名称は「特定生産性向上設備等投資促進税制」です。国内での設備投資を後押しし、企業の収益力(いわゆる「稼ぐ力」)を高めることを目的としています。
これまでの設備投資向けの税制は、機械装置などが中心で、建物は対象になりにくいものでした。この制度では、条件を満たせば建物、建物附属設備、構築物も優遇の対象になります。この点が大きな特徴です。
優遇の内容は、次の2つから選びます。
- 即時償却:通常は耐用年数に応じて数年から数十年かけて経費にする取得費用を、事業に使い始めた年度にまとめて経費にできるしくみです。初年度の課税所得を大きく減らせるため、投資直後の資金繰りにゆとりが生まれやすくなります。
- 税額控除:取得費用の一定割合を、納めるべき税額から直接差し引くしくみです。
2. 対象となる事業者と資産
対象となる事業者
青色申告書を提出している法人と個人事業者のうち、投資計画について経済産業大臣の確認を受けた方が対象です。ただし、法人の場合、設立した事業年度などは適用の対象外とされています。
※青色申告とは、帳簿を一定の方法で記帳し、あらかじめ税務署に届け出ることで、税制上の特典を受けられる申告方法です。
対象となる業種
幅広い業種が対象です。ただし、風俗営業等の用に供する場合など、一部は除かれます。
対象となる資産と最低取得価額
対象になる資産は、種類ごとに1件あたりの最低取得価額が決まっています。
| 資産の種類 | 1件あたりの最低取得価額 |
|---|---|
| 機械装置 | 160万円以上 |
| 工具、器具備品 | 120万円以上 |
| 建物 | 1,000万円以上 |
| 建物附属設備(電気、空調、給排水設備など、建物と一体の設備) | 120万円以上 |
| 構築物(舗装路面、塀、屋外の工作物など) | 120万円以上 |
| 一定のソフトウェア | 70万円以上 |
3. 適用を受けるための主な要件
この制度を使うには、投資計画が次のような要件を満たしていることについて、経済産業大臣の確認を受ける必要があります。
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| 投資利益率 | 年平均15%以上が見込まれること |
| 投資額の下限 | 対象設備の取得価額の合計が、中小企業者等は5億円以上、それ以外の企業は35億円以上 |
| 意思決定の手続き | 取締役会など、適切な機関の決定に基づく計画であること |
※投資利益率とは、投資した金額に対して毎年どの程度の利益が見込めるかを示す割合です。経済産業省が計算用のシートを公表しており、計画段階で収益の見通しを数字で示す必要があります。
上の表は主な要件をまとめたもので、このほかにも細かな条件があります。
4. 受けられる優遇の内容
資産の種類によって、税額控除の割合が異なります。
| 資産の区分 | 選べる措置 |
|---|---|
| 機械装置、工具、器具備品、一定のソフトウェアなど | 即時償却、または税額控除7% |
| 建物、建物附属設備、構築物 | 即時償却、または税額控除4% |
税額控除には上限があり、控除できるのはその年度の法人税額(個人事業者の場合は所得税額)の20%までです。上限を超えて控除しきれなかった金額は、一定の場合、翌年度以降3年間繰り越せます。
適用期間
令和11年(2029年)3月31日までに投資計画の確認を受け、確認を受けた日から5年以内に資産を取得して事業に使い始める(事業供用)ことが条件です。
5. 「建物も対象」をどう考えるか
工場、倉庫、店舗など、事業の拠点になる建物は投資額が大きくなりがちです。これまでは建物に使える優遇税制が限られていましたが、この制度では建物を含む投資全体について、税負担の軽減を検討できるようになりました。
一方で、次の点には注意が必要です。
- 建物の控除率は機械装置などより低く設定されています(7%に対して4%)。投資の中身によって、受けられる優遇の大きさが変わります。
- 他の設備投資減税とは併用できません。 地域未来投資促進税制などとの併用が制限されているため、どの制度が自社に合うかを比べて選ぶ必要があります。
- 即時償却と税額控除のどちらが有利かは、会社の状況によって変わります。 今後の利益見込み、繰越の可否、資金計画をふまえて判断することが大切です。
- 計画の構成によって扱いが異なる場合があります。 建物が中心の計画を考えている場合は、経済産業省の手引きやQ&Aで取扱いを確認しておくと安心です。
6. 手続きの流れ
制度を使うには、設備を取得する前に国の確認を受けておく必要があります。大まかな流れは次のとおりです。
- 投資計画をつくる
取締役会などで、投資の内容と収益の見通しを含む計画を決議します。 - 事前確認書を受け取る
投資計画の内容について、税理士または公認会計士に確認を依頼し、事前確認書を発行してもらいます。 - 経済産業局に申請する
所轄の経済産業局に確認申請を行い、確認書の交付を受けます。 - 資産を取得し、事業に使い始める
確認日から5年以内に取得と事業供用を行います。 - 事後照合を受け、税務申告を行う
確認時の計画と実際に取得した設備を照らし合わせる手続き(事後照合)を経て、確認書などの必要書類と明細書を添えて申告します。
申請には「GビズIDプライム」のアカウントが必要です。GビズIDは行政手続きをオンラインで行うための共通アカウントで、発行までに時間がかかる場合があるため、早めの取得をおすすめします。
7. まとめ:大きな投資を検討している段階でご相談を
大胆な投資促進税制は、建物を含む大規模な投資について、即時償却または税額控除を選べる制度です。活用できれば、投資時の税負担の軽減が期待できます。
ただし、確認すべき点が多くあります。
- 中小企業者等でも5億円以上の投資額が求められること
- 投資利益率15%以上の見込みを示す必要があること
- 資産ごとに最低取得価額があること
- 事前の確認手続きと事後照合が必要なこと
- 他の制度と併用できないこと
設備を取得してからでは間に合わない手続きもあるため、計画を立てる段階での検討が重要です。
当事務所では、制度の対象になるかの確認、投資計画の数値の検討、事前確認書の発行、ほかの優遇税制との比較まで、状況に合わせてサポートしています。設備投資や拠点整備をお考えの方は、お気軽にご相談ください。
※本記事は、令和8年度税制改正大綱、国税庁の改正概要資料、経済産業省の公表資料をもとに作成しています。制度の詳細は今後の公表資料で補足・変更される可能性があります。実際の適用にあたっては、経済産業省「大胆な投資促進税制」のページなどで最新の情報をご確認ください。