会社設立の費用相場と内訳|株式会社と合同会社の違いを税理士が解説

会社設立の費用相場と内訳|株式会社と合同会社の違いを税理士が解説

会社設立時に自己流で手続きを進めた結果、資本金の設定ミスで創業融資の審査に落ちたり、インボイス制度や消費税の免税要件を見落として数十万円単位の余計な税負担を抱えたりする事例が後を絶ちません。

初めての起業で専門用語に戸惑い、初期費用を1円でも安く抑えたいと考えるのは経営者として当然の心理です。

本記事では、株式会社と合同会社の設立費用の内訳から、正しいコスト削減の手法、設立後に発生するリアルな維持費までを完全に網羅して解説します。記事を読めば、ご自身の事業規模に合わせた最適な法人形態と資金計画を迷わず決定できるようになります。

会社設立の費用はいくら?株式会社と合同会社の総額比較

会社設立にかかる初期費用の総額は、選択する法人形態によって大きく異なります。まずは株式会社と合同会社、それぞれの設立費用の全体像を把握することが重要です。

株式会社の設立費用は約16.7万円から

株式会社を設立する場合、法定費用として約16.7万円から25万円程度が必要です。これに加えて資本金や法人印鑑の作成費用がかかるため、手元資金としては最低でも50万円程度を用意しておくのが実務上のセオリーです。株式会社は定款(会社のルールブック)を公証役場で認証してもらう手続きが必須ですが、2024年12月の法改正により、一定の要件を満たすスタートアップ企業は認証手数料が大幅に減額される特例が設けられました。

合同会社の設立費用は約6万円から

合同会社を設立する場合、法定費用は約6万円で済みます。株式会社と異なり、公証役場での定款認証手続きが不要であるため、3万円から5万円(または特例の1万5,000円)の認証手数料が一切かかりません。さらに法務局に支払う登録免許税も最低6万円と低く設定されており、初期コストを極限まで抑えて法人化したい場合の有力な選択肢となります。

項目株式会社合同会社
定款認証手数料1万5,000円(特例)/3万円〜5万円不要
定款用の収入印紙代4万円(電子定款で0円)4万円(電子定款で0円)
定款の謄本手数料約2,000円不要
登録免許税15万円〜6万円〜
法定費用合計(電子定款利用時)約16.7万円〜20.2万円6万円〜

1人社長ならどちらを選ぶべきか?実務上の判断基準

BtoBビジネスを展開する、あるいは将来的な資金調達や上場を見据えるなら株式会社一択です。対外的な信用度が高く、金融機関からの融資や大手企業との取引口座開設において圧倒的に有利に働きます。一方で、BtoCの店舗ビジネスや、個人事業主の節税目的での法人成り(いわゆるマイクロ法人)であれば、初期費用が安く維持の手間も少ない合同会社が合理的です。私の顧問先でも、美容室やITフリーランスの法人化では合同会社を選択するケースが増加しています。

会社設立にかかる法定費用と実費の完全内訳

会社設立費用は、国や役場に納める「法定費用」と、事業準備のために支払う「実費」の2つに大別されます。

絶対にかかる「法定費用」(登録免許税・定款認証等)

法定費用とは、会社法などの法律で定められた手続きにかかる避けられないコストです。登録免許税は法務局へ登記申請する際に納める税金で、株式会社は最低15万円、合同会社は最低6万円です。ただし、登録免許税は「資本金×0.7%」で計算されるため、この計算額が最低額を上回る場合(株式会社なら資本金約2,143万円超、合同会社なら約857万円超)はその計算額を納めることになります。

定款認証手数料は、公証人に定款の正当性を証明してもらうための費用です。原則として資本金が100万円未満の場合は3万円、100万円以上300万円未満の場合は4万円、300万円以上の場合は5万円と定められています。しかし2024年12月1日施行の改正により、資本金100万円未満かつ「発起人全員が自然人であり3人以下」「発起人が全株式を引き受ける」「取締役会を設置しない」という条件を満たす場合は、特例として1万5,000円に減額されます。

必ず用意すべき「その他の実費」(法人印鑑・証明書代など)

法定費用のほかにも、会社を機能させるために実費が発生します。法務局に登録する代表者印(会社実印)の作成は必須であり、実務上は銀行印や角印を含めた3本セットで作成するケースが多く、費用として5,000円から30,000円程度が必要です。また、法人口座の開設やオフィス契約に提出する「登記事項証明書」や「法人の印鑑証明書」の取得費用として、1通あたり500円前後の発行手数料が数千円分かかります。

【重要】資本金は1円でも可能だが、実務上の目安はいくら?

資本金は制度上1円から設定可能ですが、実務においては100万円から300万円を初期の目安として推奨します。資本金は会社の体力を示す客観的な指標であり、1円や10万円といった極端に低い金額では、法人口座の開設審査で「事業実態がない」とみなされ謝絶される確率が跳ね上がります。また、許認可が必要な業種(建設業や労働者派遣事業など)では、数百万円から数千万円の自己資本要件が法律で定められているため、事前の確認が必須です。

会社設立費用を安く抑える3つの方法

初期費用は工夫次第で数万円単位の削減が可能です。合法かつ確実なコスト削減手法を3つ紹介します。

電子定款を利用して収入印紙代(4万円)を節約する

定款を紙ではなくPDFファイルの「電子定款」として作成することで、印紙税法上の非課税文書となり、収入印紙代の4万円を丸ごと節約できます。ただし、ご自身で電子定款を作成するには、マイナンバーカードを読み込むICカードリーダーや専用のPDF署名ソフトを数万円で購入する必要があります。そのため、すでにシステムを保有している税理士や行政書士などの専門家に設立手続きを代行してもらうのが、最も費用対効果の高い方法です。

合同会社を選択して初期コストを下げる

前述の通り、法人形態を合同会社にするだけで、株式会社と比較して法定費用を最大で約14万円(定款認証の特例適用時でも約10.7万円)安く抑えることができます。店舗名やサービス名が前面に出る事業であり、会社名自体のブランド力が業績に直結しない業態であれば、合同会社で設立して初期の運転資金を手厚く確保する戦略が有効です。

特定創業支援等事業を活用して登録免許税を半額にする

本店所在地を置く市区町村の「特定創業支援等事業」による支援(セミナー受講や個別相談など)を一定期間受けることで、法務局で支払う登録免許税が半額に減免されます。株式会社であれば最低15万円が7.5万円に、合同会社であれば最低6万円が3万円になります。自治体ごとに制度の有無や受講要件が異なるため、設立準備の初期段階で管轄の役所へ確認することが必須です。

【税理士が警告】安易なコスト削減に潜む3つの罠

目先の費用を削ることばかりに気を取られると、設立後に致命的な失敗を招くリスクがあります。専門家の視点から特に注意すべき落とし穴を解説します。

罠1. 資本金100万円未満で創業融資の審査に落ちるリスク

資本金を極端に低く設定すると、日本政策金融公庫などの創業融資において「事業への本気度が低い」「自己資金の計画性がない」と判断され、審査落ちの直接的な原因となります。創業融資は原則として「自己資金の金額」をベースに融資枠が決定されるため、数百万円の借入を希望するなら、それに見合う資本金(自己資金)を口座に用意しておくのが金融実務の鉄則です。

罠2. 代行業者の「手数料0円」に隠された顧問契約の縛り

「設立代行手数料0円」を謳うサービスの多くは、設立後に月額数万円の税理士顧問契約を長期間結ぶことが必須条件となっています。初期費用は確かに安くなりますが、自社のフェーズに合わない税理士と解約不可の契約を結んでしまい、2年間トータルで見れば相場より数十万円高いコストを支払う羽目になるケースが散見されます。契約の縛り期間と解約違約金の条項は必ず確認してください。

罠3. 設立日・決算期の設定ミスで消費税の免税期間を失う

設立時の状況次第では、最大2事業年度にわたり消費税が免除される可能性がありますが、制度の要件を見落とすとこの恩恵を失います。免税を享受するには、資本金が1,000万円未満であることに加え、特定新規設立法人(親会社の課税売上高が5億円超など)に該当せず、インボイス発行事業者の登録をしないことが大前提となります。インボイス登録をするとその時点で自動的に課税事業者となるため注意が必要です。また、設立1期目の前半6ヶ月(特定期間)の課税売上高または給与支払額が1,000万円を超えると2期目から課税事業者となるため、これを回避する高度なテクニックとして、あえて1期目を7ヶ月ちょうどに設定する実務判断も存在します。

会社設立後に毎年かかる「維持費」のリアルな相場

法人を設立すると、事業が黒字か赤字かに関わらず発生する固定の維持費が存在します。資金ショートを防ぐため、事前に年間のランニングコストを把握しておきましょう。

赤字でも最低7万円かかる「法人住民税均等割」

法人は存在しているだけで、地方自治体に対して「法人住民税の均等割」を納める義務があります。資本金1,000万円以下かつ従業員50人以下の小規模法人の場合、年額で一律7万円です。個人事業主であれば赤字の年の税金はゼロになりますが、法人の場合は売上が全く立たなくても毎年必ず7万円のキャッシュアウトが発生することを資金繰りに組み込む必要があります。

個人の約2倍?役員報酬に対する「社会保険料」の負担

法人は、社長1人だけの会社であっても健康保険と厚生年金保険への加入が法律で義務付けられています。社会保険料は役員報酬の額に応じて決まり、目安として報酬額の約30%が発生します。さらに40歳以上になると介護保険料が加わり約32%から33%に増えるほか、都道府県ごとに健康保険料率が変動することにも留意が必要です。保険料は会社と個人で折半して納付する仕組みですが、1人会社の場合は実質的に会社全体から全額を負担することになり、個人事業主時代と比較して負担感が極めて重くなります。

税理士報酬と会計ソフト費用の年間相場

法人の税務申告書は構造が非常に複雑であり、個人が独学で作成するのは極めて困難なため、税理士との顧問契約が実質的に不可欠です。スタートアップや小規模法人の一般的な相場は、月額の顧問料が2万円から3万円、年1回の決算申告料が10万円から15万円程度となり、年間トータルで35万円から50万円です。ただし、記帳をすべて自社で行い、訪問なしの決算申告のみを依頼するプランであれば月額1万円から1.5万円程度に抑えられる事務所も増えています。これに加えて、クラウド会計ソフトの利用料として年間3万円から4万円のシステム費が発生します。

会社設立手続きは自分でやるべきか?専門家へ依頼する費用対効果

設立手続きを自分で行えば代行報酬は節約できますが、時間的コストとミスのリスクを天秤にかける必要があります。

自分で手続きする場合の隠れたコスト(時間・やり直し)

定款の作成から法務局への登記申請までを自身で行う場合、不慣れな書類作成や役所への度重なる往復により、数十時間という膨大な時間を消費します。書類に不備があれば法務局で何度も補正を求められ、予定していた設立日に間に合わないリスクもあります。経営者の最も重要な仕事は「事業を軌道に乗せるための営業活動」であり、設立手続きに時間を奪われる機会損失は、数万円の代行報酬をはるかに上回ります。

司法書士・行政書士・税理士、誰に頼むべきか?

会社設立に関わる専門家は法律で業務範囲が厳密に分けられています。各種届出と専門家の対応範囲は以下の通りです。

手続き内容提出先対応できる専門家
定款の作成・認証公証役場行政書士、司法書士(弁護士)
設立の登記申請法務局司法書士(または弁護士)
設立後の税務署届出税務署税理士
設立後の社会保険届出年金事務所社会保険労務士

法務局への登記申請を業として代理できるのは、原則として司法書士(および弁護士)のみです。そのため、登記を丸投げしたい場合は司法書士が窓口となります。ただし、設立後の税務手続きや資金繰りまで一貫して任せたい場合は、提携する司法書士を抱えている税理士事務所を最初の窓口とするのが最もスムーズです。

創業融資や補助金を見据えるなら税理士への事前相談を

設立直後に日本政策金融公庫からの創業融資や、小規模事業者持続化補助金などの獲得を狙う場合は、設立手続きの前に税理士へ相談することが必須です。金融機関が納得する事業計画書の策定や、融資要件を満たすための適正な資本金額の決定は、税務と財務のプロフェッショナルによる助言が欠かせません。手続き単体の代行ではなく、事業のスタートダッシュを総合的に支援できるパートナーを選ぶことが成功の鍵となります。

会社設立と税理士に関するよくある質問(FAQ)

会社設立の費用や実務に関する疑問について回答します。

会社設立の費用を経費として落とすことはできますか?

会社設立のために支払った登録免許税や定款認証手数料などの費用は、「創立費」という名目で法人の経費(繰延資産)として計上できます。実務上の大きなメリットとして、この創立費は「任意償却」が認められており、法人の利益が出た黒字年度に合わせて自由に償却し、節税に活用することが可能です。

資本金は設立費用の支払いに使えますか?

発起人の個人口座に払い込んだ資本金は、法人の設立登記が完了し、法人口座を開設した後にそちらへ移管します。移管完了後であれば、法人の運転資金としてパソコンの購入やオフィス家賃、商品の仕入れなど、事業のための支払いに自由に使用できます。口座に見せ金としてずっと保管しておく必要はありません。

バーチャルオフィスで登記する場合、費用はいくらかかりますか?

住所のみを借りるバーチャルオフィスを利用する場合、月額1,000円から5,000円程度の利用料で法人登記が可能です。賃貸オフィスを借りる初期費用を大幅に削減できますが、事業実態が見えにくいため法人口座開設の審査が厳格化するリスクがあります。また、古物商(中古品転売など)や人材紹介業など、一部の許認可事業では独立した実体のあるオフィス空間が要件となっているため事前の確認が必要です。

会社設立手続きにはどれくらいの期間がかかりますか?

必要書類の準備から法務局での登記申請までに約1週間、登記申請から完了(登記簿謄本が取得できるようになるまで)に約1週間の、合計2週間から3週間程度が一般的な目安です。1日でも早く設立したい場合は、書類作成に慣れた専門家へ依頼することで、準備期間を数日に短縮することが可能です。

個人事業主から法人成りする場合、費用感は変わりますか?

法人を設立するための法定費用(株式会社約16.7万円〜、合同会社6万円)は、新規設立でも法人成りでも全く同じ金額がかかります。ただし法人成りの場合は、個人事業主時代の資産や負債を法人へ引き継ぐための手続き(事業譲渡契約書の作成など)が発生するため、移行処理を含めた税理士へのコンサルティング報酬が追加で数万円から十数万円かかるケースがあります。

まとめ:会社設立費用を正しく把握し、万全のスタートを切ろう

会社設立には、株式会社で約16.7万円から、合同会社で約6万円の法定費用が最低限必要です。初期費用を安く抑えること自体は重要ですが、インボイス制度を無視した決算期の設定や、資本金の過少設定は、融資の否決や税務上の不利益など取り返しのつかない失敗につながります。

設立後の維持費や社会保険料の負担も考慮した上で、自社にとって最適な法人形態と資金計画を立てることが、経営を軌道に乗せるための第一歩です。ご自身の事業に合わせた正確な必要資金を把握するために、まずは初回無料相談などを活用し、創業支援に強い税理士へ事業計画の壁打ちを依頼することから始めてみましょう。